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なぜ子供のいる家が分かるのか?

 ところで、「どうして子供のいる家が分かるのだろう?」と疑問に思ったことはないだろうか?
 私はずっと不思議に思っていた。
 どんな名簿を手に入れるかにもよるが、子供をターゲットにした教材販売の場合は、手当たり次第に電話をかけたり飛び込み訪問をしたりしても子供がいるかどうかわからないし、仮にいたとしてもターゲットとなる学年なのかどうかも分からない。あらかじめ、最低限の情報は持っていないとやりにくい。
 結論から言えば、やはり名簿を手に入れるわけである。

 先日、教育販売関係の仕事をされていたという、こうちゃん氏から面白いお話を聞く機会があったので、ご紹介しよう。
 こうちゃん氏が勤めていた会社では、家庭教師とのセットで、30〜150万円程の教材を売るといった商売方法を展開していた。その手口は実に巧妙で、マインドコントロールされた営業(指導員)が小学生・メインの中学生・高校生宅を訪問するという。
 せっかくの機会なので、どうやって子供のいる家庭を見分けるのか、尋ねてみた。

 学校では、クラス単位の名簿を年度の初めに作成する。主に連絡網や年賀状を出すときに利用する程度だが、必要以上の個人情報が書かれていたりする。最近では名簿屋に渡るリスクも考慮されて余計な情報を掲載しない学校も出てきたと聞くが、私が通っていた学校(っても、500円がお札だった時代の話だが)では、住所、電話番号、両親の名前(片親だというのもバレちゃう)、生年月日くらいは載っていた。まさに個人情報の宝庫だった。
 業者は、この名簿を小学生や中学生の子供から直接手に入れる。学校の帰り道や、コンビニ、ゲームセンター等で小・中学生を捕まえ、アメを餌に名簿を得るというのが主な方法だ。また、ゲームショップの店員を装い、学校帰りの子供に接近する方法もあるそうだ。ゲーム好きの子供を見つけ、自己紹介した後、もっともらしいアンケートをする。アンケートを終えると、「新店舗がオープンしたので宣伝に来た」「無駄な経費がかからないよう、確実にゲーム好きがいる家庭に広告を出したい」「協力してくれたら好きなゲームソフトをプレゼントする」とのたまうのだ。
 ゲームソフトに釣られた子供たちは、卒業アルバムやクラス名簿を持ってくるのでこれで入手完了。もちろんゲームソフトをプレゼントだなんて話は嘘だ。
 こんなふうに、各学校の3〜4クラス分の名簿が集まれば、あとは電話で友達、兄弟をもとにすべて揃う。コストをかけずに名簿を手にできるだけではなく、これら名簿を名簿屋に売り払えば儲けが出るというわけだ。

 そんな話を聞いていたら、儂のほうでもかつて学生時代にバイトをしていた予備校の話を思い出した。
 バブルが崩壊し、ついでに子供の数も減り、各予備校・塾において淘汰が始まった頃だ。バブル時代は半年で10万円近くかかっていたものが、少ない子供の奪い合いで半額以下のデフレ状態になりますます経営が苦しくなってきた。
 当初は「勧誘はいたしません」というスタンスではあったが、時代の波というか、とうとう電話勧誘を始めざるを得なくなってしまった。
 ここで出てきたのが、謎の名簿だった。
 何が謎かというと、すべて手書きで書かれており、項目は市内在住の子供の氏名、住所、生年月日などが記されていた。文字色はカーボン紙で写し取られたものなのか、青い。きれいな文字とは言い難く、一部読み取りにくかった。
 生年月日が分かれば学年が分かる。住所が分かれば学区が分かり、通学校名が分かる。これを以て、電話をかけたりダイレクトメールを送ったり、学校までチラシ配りなどをした。
 問題は、この名簿の入手経路だ。聞いた話では、住民票の写しを必死に書き綴ったものだというが、完全な裏は取れなかった。なお、1000人近く載っている名簿で10〜20万円なり。


営業方法

 こうちゃん氏からは、営業の内容も伺うことができた。
 以下、メールの内容である。
 当然、こちらとしては教材を売りつけるのが目的となりますが、殆どの家庭では早い時期から高額な教材を純教材屋から購入しています。しかし、教材を購入した家庭のうち8〜9割方その教材は使っていません。問題集も未使用の白紙状態です。それに加えほぼ毎日かかってくる教材屋からの電話勧誘で、どこの家庭も嫌気がさしています。もう教材なんていらないと考えています。
 そこで、
「五科目(国・数・社・英・理)を1回2時間、週2回で月15000円の家庭教師」
 という餌でターゲットを絞ります。ここでいうターゲットとは、勉強が出来ない、勉強嫌いな子がいる家庭、正確にはそういう子を持った母親を、テレコールを通じて探り当てていきます。
 ターゲット宅には、父親がいない時間帯を狙って営業が訪問します。訪問の際は、家庭教師を統率する有名大学教育学部出身の指導員を装ってです。
 話の進行内容としては、他の勉強法(学校の授業・塾・教材)を否定して、家庭教師が一番だということを前提として話を進めます。なおかつ一般的な家庭教師では成績は上がらない。たとえ上がったとしても理解していないと意味がないと説き伏せます。
 ターゲットは最後まで教材屋が教材を売りつけている、とは持っていません。また、首尾良く契約につながった際も、ターゲットは高い教材を買わされたとは意識しません。ここがマジックです。

 ターゲットとなる家庭では、子供は親に対して信頼を失っています。
 親の言い分としては
「うちの子は勉強出来ない」
「勉強大嫌い」
「欲しいと言うから買ってあげた高い教材もほったらかし」というように…。
 そこで子供を使って
「勉強が出来ない、勉強嫌いなのは子供のせいではない、教材も使わないではなく、使えない」
「学校の授業方針が悪い」
「子供のおかれている状況を理解していない親が悪い。あんたは大きな勘違いをしている」
「信頼している親にわかってもらえない子供が可愛そう」
 と、あくまでも”子供のために”をタテマエに親を猛攻撃します。場合によっては泣かすこともあります。そうして時間をかけて母親を説得し、納得させつつ思考を変えていきます。それと同時に超強力な武器(子供)はこちらの手の内に落ちていきます。
 話の途中にいろいろトリックを駆使しつつ、最終局面でもったいつけながら持参した教材をみせます。それをみた子供は目を輝かせ、それに釘付けとなります。親も我が子のその様子をみて微笑みます。
「勉強と聞いただけで嫌がっていた我が子がやる気をみせている」と。

 ターゲットの家庭では、高額な教材を多いところで既に3・4セットは購入しています。金額でいえば100万〜300万にもなります。勧誘される度に子供の返事に騙され、親は買ってあげているのです。
 しかし、指導員のトリックによって、親はみせられた物を教材とは思っていません。というより、学校の授業はもとより、今まで購入している白紙の教材、塾で勉強していくのに絶対必要な基礎知識と思っています。一番効率の良い勉強法は家庭教師。しかし先生がポイントをついた正確確実な教え方をするためにはこの教材が絶対必要。この方法しかない! と思うわけです。
 子供は自分の夢のために、親は今までにない子供のやる気のために将来のために購入するのです。

 最終的には高額教材を買せるわけですが、必ずローンを組んでもらいます。
 中には裕福な家庭もあり、現金一括で支払うと言われても、ローン用紙に記入させることによって「不確かな子供の将来を高額な金で買った」ということに踏ん切りをつかす意味合いを込めます。当然、信販会社からのバックもありますが。
 この商売において、理想的な営業の場というのは、母(子供との距離が最も近い者)・子供そして営業の3者のみ存在しているときです。
 ですから、訪問する時間帯も父の不在時にしますし、営業も出来るだけこの場を組むよう努力します。
 母・子の説得が終わり、ローン用紙を記入させた後、最終段階としてキャンセルフォロー(解約阻止)に力を集中させます。
「親父内緒」と私等は言っていましたが、簡単に内容を書いときます。

 クーリングオフ出来ることをあえて母に言います。
 そこで説明した勉用法が今までの物とはまったくの別物、学校授業の遅れを取り戻すには最適、そして今までにないやる気というのを子供を使って再度母に見せつけます。
 もし、話を聞いていない父・子供のやる気をみていない父がこの事を知ったらどうなるか?
「お母さんの口からお父さんに話すと、勉強内容・子供のやる気などよりも、ローン用紙の金額だけが目に入り、必ず頭ごなしに反対しませんか?」と母に問いかけます。
 確かに今日みせた子供のやる気は小さなものかもしれない。しかし、大嫌いな勉強の話をこんなに目を輝かせて聞いたことがありますか? と。お母さんの仕事は、この小さなやる気を大切に育てていくことじゃないでしょうか? お父さんに話すのは成果が出てきた時、つまりテストの点数が上がった時に初めて子供の口からお父さんに伝えてあげたほうがいいと思う。
 テストの点数が簡単に上がれば、○○君どう? やる気がもっと出てこんか? という具合に最後に蓋をします。

 最後にまとめますと、

 1.フロントトーク
 2.現状
 3.授業・塾・家庭教師つぶし
 4.内容
 5.夢トーク
 6.金銭比較
 7.クロージング
 8.親父ナイショ

上記が基本的な流れとなります。
Special Thanx: こうちゃん様(2002/08)
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